東京電力、福島第1原発事故の原因は、非常用電源が動かなかったことに因ります。非常用電源が動かないと、冷却機能が喪失し、水素爆発や炉心溶融(メルトダウン)が発生します。
非常用電源が動かないというのは致命的な問題につながるため、必ず動くようにしておかなければなりません。しかし、今回は事故が発生してしまいました。なぜこのようなことが起きるのでしょうか。東京電力の考え方のどこに問題があったのでしょうか。今回はその理由を考えてみたいと思います。
非常用電源は常に動作するようにしておく必要があります。しかし、完全に故障がない電源を作ることは不可能です。絶対に故障は起こりうるからです。そこで東京電力は、3台の非常用電源を用意しました。もし2台が壊れても残りの1台が動けば、冷却機能は保たれる、という設計でした。
具体的に、どのように高い稼働率(=ちゃんと動く確率)を確保するのでしょうか。
仮に、非常用電源が3台とも同時に故障してしまう確率を0.0001%に抑えたいとします。
0.0001%というのは、長時間の停電が100万回起きたら、その内の1回は事故になるということです。逆に言えば、99万9999回停電が起きても大丈夫といえます。これなら安心かなという気もします。
この、0.0001%を実現するために、少し知識がある人であれば稼働率の計算が思いつくと思います。
稼働率 = MTBF / ( MTBF + MTTR )
という式で求められます。
発電機1台の稼働率が0.99として、3台並列にすれば、
全体の稼働率 = 1 - (1 - 0.99 ) x (1 - 0.99 ) x (1 - 0.99 )
となります。
全体の稼働率は0.999999、少なくとも1台が動く確率は99.9999%、1台も動かない確率が0.0001%になります。
(正確には100万時間の内1時間だけ止まる=1年間で30秒ほど止まる、という計算)
図にすると、こんな感じですね。
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┌─┤発電機├─┐
│ └───┘ │
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─┼─┤発電機├─┼─
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└─┤発電機├─┘
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・・・以上の説明をきくと、きちんと考えられているような気がしませんでしょうか。
これは、まさに教科書的な解答であり、なんだかもっともらしい感じがします。
しかし、実際には全く役に立たないアプローチです。
事実、3台の発電機は同時に故障し、事故は起きてしまっています。
先ほどの教科書的アプローチには、様々な机上の空論的前提があります。前提の中で最も致命的なのは「3台の非常用電源のFailure(故障)は独立的に発生する」というものです。3つの非常用電源がそれぞれの理由で故障するとは限らず、ひとつの理由、例えば津波で故障することもあり得るわけですが、その考慮が全くされていません。こういった思考を事故が起こる前にどれだけ直感的にイメージできるかどうかは、教科書的知識の地道な積み上げだけでは実現しません。ちょっとした飛躍が必要です。
現代日本の教育では、教科書的知識や型にはまった考え方に重きを置き、逆にフレームを外した考え方を排除してきました。それが、今回の事故の背景にあります。
型にはめる教育を受けてきた人は「大事なのはそこじゃない」という所に目がいってしまいます。しかし、本人の中ではそれで正しいのです。本質がまるで見えていません。
まともな投資家(=全体の1%未満)であれば、教科書的知識は全く役に立たないこと、それどころか非常に危険であるということをよく理解しています。
これからの時代、個人も企業はリスク管理を修得しなければなりません。その際には、投資家から学ぶとよいでしょう。投資家よりリスク管理に長けているのは、軍隊位しかありません。