2011.02.19 Saturday
SNS開発者が観た、映画「ソーシャル・ネットワーク」
映画「ソーシャル・ネットワーク」に関するクチコミが徐々に広まっています。私の周りでも多くの人が観ています。
多くの人はSNS利用者として観ていると思いますが、私はフェイスブックが作られていたのと時期を同じくしてSNS開発をしていたので、開発者の視点(=主人公達の視点)で観ていました。
そこで、映画についてと、自分の経験について平行してちゃんぽんで書かせていただきたいと思います。
映画のタイトルにもなっている「ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)」とはインターネットのサービスのひとつで、「人と人の関係性をつないだ構造を持つWebサービス」全般を指します。日本ではミクシィ、グリーが有名です。ミクシィ、グリーは、日本最大規模かつ、日本最初のSNSと言われています。ただSNSの定義にも幅があり、私が東大MOTにいたころ大変お世話になった東京大学大学院情報学環客員研究員の前田邦広氏によると、彼自身が1996年頃からSNSに取り組んでいたとのことです。
一方、世界のSNSとしては「フェイスブック」が最も有名かつ大規模です。映画「ソーシャル・ネットワーク」はこの「フェイスブック」の創設者、ザッカーバーグを主人公とした映画です。
作品はフェイスブックの誕生から成功するまでについてドキュメンタリーのように描かれていますが、ザッカーバーグ曰く「映画の内容は、着ている服以外は作り話」とのことです。本人がそういう以上、当然フィクションとして観るべきでしょう。それでも少なくとも主たる登場人物は実在であり、ドラマとしてみた場合非常によくできていると思います。
私が初めてSNSを知ったのはmixiやGREEよりも少し前、確か2003年にGoogleの社員が作ったOrkutというサービスがきっかけでした。Orkutを見たとき、直感的に「とんでもないサービスだ」と感じました。2003〜2004年というのは、SNSビックバンの時代で、この時期に数々のSNSが生まれました。ザッカーバーグのフェイスブック、mixiやGREE、私がSNS開発をしていたのもまさにこの頃です。
当時の私も一応世界規模で考えていたので、「ソーシャル・ネットワーク」を見ながら、自分たちがどう行動すれば良かったのかについて振りかえりの機会となりました。「こうすべきだったのかな」と感じたことがいくつかあり、その中からわかりやすいものをふたつ。ひとつ目はブランディング。フェイスブックは当時からハーバード発ということで注目されていましたし、しかもウィンクルボス兄弟が所属するファイナルクラブという格のある集まりから発祥しています。東大MOTは工学部でしたから、その縁で初期メンバーや開発者を募るというのは一つの方法だったかも知れません。ふたつめは資金調達。映画の中でザッカーバーグの親友、エドゥアルドが資金繰りに苦労する中、Napsterの設立者ショーンが現れスピーディーに資金調達します。私もすぐに大口の投資をしてくれる先を探していたら、結果は違っていたかも知れません。当時トップを走っていたのはGREEでしたが、まだ会員数は1〜2万人と、現在のわずか1000分の1以下であり、十分に射程距離にいました。
私がSNSに自信を持って取り組んでいた理由の一つに、SNS開発よりも前にITサービスでひとつの成功体験がありました。それはインターネット取引において電話番号課金で決済を行うというビジネスモデルを作ったことです。一般的に知られているところでは着メロや携帯ゲームのように、電話代に料金が乗ってくるという仕組みです(DoCoMoの場合はインターネット取引ではなくiモード網内取引というべきかもしれませんが)。これによって手間いらずの課金が可能になりました。NTT本社のプロジェクトで、マネージャーも「日本初、もしくは世界初」という認識の元の取り組みでしたから、私は「自分が発案、実現した」(少なくとも同時多発的)という自負がありました。ですから、SNSを少なくとも日本一にするくらいのことは本気で考えていました。
さらに余談ですが、今でこそ言えることとして、GREEのリサーチを行っている際に偶然セキュリティーホールを見つけてしまったこともあります。悪意を持った人によって、全ユーザのデータを抹消されかねない状態でした。当時はSNSに限らず、ネットサービス全般が機能拡充が優先で、セキュリティは後回しでした。
フェイスブック開発陣は、生活をほとんど全て開発に注ぎ込んでいます。私も、毎日のように朝も夜も自腹のタクシーで通勤をしながら、仕事に熱中していました。人と人がつながることで世界を変えられると本気で思っていたからです。しかし、SNS開発は体制などの面で複雑なものとなり、外に出す(商用サービス化)にする前に、私は開発から離れることになりました。そして、別途社内に特化したSNSを立ち上げ、当時としては日本最大規模の社内SNSになりましたが、物足りなさで一杯でした。そのころ、私たちの取り組みはWeb2.0と呼ばれていました。
フェイスブックは、実名性という特徴があります。一般に、実名は称賛、匿名は批判の文化になります。日本は勝間さんにしろ、堀江さんにしろ目立つとろくな事がない、という若者をスポイルさせる文化なので、これを改善するためにも実名性は一役買うと思われます。私が管理者をしていた上記SNSもフェイスブック同様、実名性を旨としていました。もちろん旧姓を名乗るなど柔軟に対応していましたが、明らかに実名ではないユーザには、ひとりひとりメールで変更を依頼していました。当然、実名性によって建設的な議論を得られました。当時から、海外にも匿名のSNSはありましたが、実名のフェイスブックが勝ったということは、私の直感は結果的に正しかったと確信しています。
ところで、映画の中で好みがわかれるのがザッカーバーグの話し方です。階段を一段抜きするように話しを展開させたり、シュールなジョークを折り込んだりします。しかも、相手がばかだと思ったらまったく相手にせず、聞く耳を持ちません。そして、天才的な人との会話になると、目を輝かせて楽しそうにおしゃべりをします。ザッカーバーグとショーン・パーカーが意気投合している場面でのやりとりは最高に爽快です。
SNSは私がITという分野で最後にやりたかったことであり、mixiやフェイスブックに実現されてしまったため、ITという世界を離れ、今ではあまり関心がありません。SNS以上にこれだと思うサービスは思いつく自信がありませんでしたし、実際今でも思いつきません。そして、当時から、次はお金の時代、心の時代だと言っていて、今日に至っています。ザッカーバーグは、フェイスブックで世界をどのように考えていくのか、非常に興味深いものがあります。
ぜひみなさんも、「ソーシャル・ネットワーク」を観て下さい、そしてフェイスブックに参加してみて下さい。
http://www.facebook.com/hikaru.nitta
「facebook」こちらは映画に沿った内容です。
「フェイスブック 若き天才の野望」評判、よいです。
※SNS開発は私だけの取り組みではないし、むしろ私以外の多くの人の知恵、努力によって取り組まれていました。関わった方全ての人に敬意を込めて。
多くの人はSNS利用者として観ていると思いますが、私はフェイスブックが作られていたのと時期を同じくしてSNS開発をしていたので、開発者の視点(=主人公達の視点)で観ていました。
そこで、映画についてと、自分の経験について平行してちゃんぽんで書かせていただきたいと思います。
映画のタイトルにもなっている「ソーシャル・ネットワーク・サービス(SNS)」とはインターネットのサービスのひとつで、「人と人の関係性をつないだ構造を持つWebサービス」全般を指します。日本ではミクシィ、グリーが有名です。ミクシィ、グリーは、日本最大規模かつ、日本最初のSNSと言われています。ただSNSの定義にも幅があり、私が東大MOTにいたころ大変お世話になった東京大学大学院情報学環客員研究員の前田邦広氏によると、彼自身が1996年頃からSNSに取り組んでいたとのことです。
一方、世界のSNSとしては「フェイスブック」が最も有名かつ大規模です。映画「ソーシャル・ネットワーク」はこの「フェイスブック」の創設者、ザッカーバーグを主人公とした映画です。
作品はフェイスブックの誕生から成功するまでについてドキュメンタリーのように描かれていますが、ザッカーバーグ曰く「映画の内容は、着ている服以外は作り話」とのことです。本人がそういう以上、当然フィクションとして観るべきでしょう。それでも少なくとも主たる登場人物は実在であり、ドラマとしてみた場合非常によくできていると思います。
私が初めてSNSを知ったのはmixiやGREEよりも少し前、確か2003年にGoogleの社員が作ったOrkutというサービスがきっかけでした。Orkutを見たとき、直感的に「とんでもないサービスだ」と感じました。2003〜2004年というのは、SNSビックバンの時代で、この時期に数々のSNSが生まれました。ザッカーバーグのフェイスブック、mixiやGREE、私がSNS開発をしていたのもまさにこの頃です。
当時の私も一応世界規模で考えていたので、「ソーシャル・ネットワーク」を見ながら、自分たちがどう行動すれば良かったのかについて振りかえりの機会となりました。「こうすべきだったのかな」と感じたことがいくつかあり、その中からわかりやすいものをふたつ。ひとつ目はブランディング。フェイスブックは当時からハーバード発ということで注目されていましたし、しかもウィンクルボス兄弟が所属するファイナルクラブという格のある集まりから発祥しています。東大MOTは工学部でしたから、その縁で初期メンバーや開発者を募るというのは一つの方法だったかも知れません。ふたつめは資金調達。映画の中でザッカーバーグの親友、エドゥアルドが資金繰りに苦労する中、Napsterの設立者ショーンが現れスピーディーに資金調達します。私もすぐに大口の投資をしてくれる先を探していたら、結果は違っていたかも知れません。当時トップを走っていたのはGREEでしたが、まだ会員数は1〜2万人と、現在のわずか1000分の1以下であり、十分に射程距離にいました。
私がSNSに自信を持って取り組んでいた理由の一つに、SNS開発よりも前にITサービスでひとつの成功体験がありました。それはインターネット取引において電話番号課金で決済を行うというビジネスモデルを作ったことです。一般的に知られているところでは着メロや携帯ゲームのように、電話代に料金が乗ってくるという仕組みです(DoCoMoの場合はインターネット取引ではなくiモード網内取引というべきかもしれませんが)。これによって手間いらずの課金が可能になりました。NTT本社のプロジェクトで、マネージャーも「日本初、もしくは世界初」という認識の元の取り組みでしたから、私は「自分が発案、実現した」(少なくとも同時多発的)という自負がありました。ですから、SNSを少なくとも日本一にするくらいのことは本気で考えていました。
さらに余談ですが、今でこそ言えることとして、GREEのリサーチを行っている際に偶然セキュリティーホールを見つけてしまったこともあります。悪意を持った人によって、全ユーザのデータを抹消されかねない状態でした。当時はSNSに限らず、ネットサービス全般が機能拡充が優先で、セキュリティは後回しでした。
フェイスブック開発陣は、生活をほとんど全て開発に注ぎ込んでいます。私も、毎日のように朝も夜も自腹のタクシーで通勤をしながら、仕事に熱中していました。人と人がつながることで世界を変えられると本気で思っていたからです。しかし、SNS開発は体制などの面で複雑なものとなり、外に出す(商用サービス化)にする前に、私は開発から離れることになりました。そして、別途社内に特化したSNSを立ち上げ、当時としては日本最大規模の社内SNSになりましたが、物足りなさで一杯でした。そのころ、私たちの取り組みはWeb2.0と呼ばれていました。
フェイスブックは、実名性という特徴があります。一般に、実名は称賛、匿名は批判の文化になります。日本は勝間さんにしろ、堀江さんにしろ目立つとろくな事がない、という若者をスポイルさせる文化なので、これを改善するためにも実名性は一役買うと思われます。私が管理者をしていた上記SNSもフェイスブック同様、実名性を旨としていました。もちろん旧姓を名乗るなど柔軟に対応していましたが、明らかに実名ではないユーザには、ひとりひとりメールで変更を依頼していました。当然、実名性によって建設的な議論を得られました。当時から、海外にも匿名のSNSはありましたが、実名のフェイスブックが勝ったということは、私の直感は結果的に正しかったと確信しています。
ところで、映画の中で好みがわかれるのがザッカーバーグの話し方です。階段を一段抜きするように話しを展開させたり、シュールなジョークを折り込んだりします。しかも、相手がばかだと思ったらまったく相手にせず、聞く耳を持ちません。そして、天才的な人との会話になると、目を輝かせて楽しそうにおしゃべりをします。ザッカーバーグとショーン・パーカーが意気投合している場面でのやりとりは最高に爽快です。
SNSは私がITという分野で最後にやりたかったことであり、mixiやフェイスブックに実現されてしまったため、ITという世界を離れ、今ではあまり関心がありません。SNS以上にこれだと思うサービスは思いつく自信がありませんでしたし、実際今でも思いつきません。そして、当時から、次はお金の時代、心の時代だと言っていて、今日に至っています。ザッカーバーグは、フェイスブックで世界をどのように考えていくのか、非常に興味深いものがあります。
ぜひみなさんも、「ソーシャル・ネットワーク」を観て下さい、そしてフェイスブックに参加してみて下さい。
http://www.facebook.com/hikaru.nitta
「facebook」こちらは映画に沿った内容です。
「フェイスブック 若き天才の野望」評判、よいです。
※SNS開発は私だけの取り組みではないし、むしろ私以外の多くの人の知恵、努力によって取り組まれていました。関わった方全ての人に敬意を込めて。



